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松川浦と生き物たち

東北最大規模の干潟松川浦。震災前は、実にさまざまな生き物が暮していました。また干潟の生きものたちは驚くような浄化力を持ち、松川浦の豊かな生態系を維持してきました。松川浦は、北端で太平洋とつながった縦に長い袋状の形をしており、南の奥まではおおよそ5kmの距離があります。

しかし、これだけの距離がありながら、航路が掘られていることもあって、奥部に至るまで海水の入れ替えは良くなされています。潟は全体的に浅く、春の大潮時には、潟湖面積633ヘクタールのうち半分くらいの面積が干潟となります。これは東北地方に存在する干潟のうちで最大規模のものです。

以前の松川浦の干潟には、100種類をこす、カニや貝やゴカイの仲間が生息しており、生物多様性に富む豊かな生態系が保たれていました。これは、砂っぽいところから泥分の多いところまで、また、川の影響の大小など、さまざまなタイプの干潟が存在していたからです。自然状態では、干潟の陸側にヨシ原があり、海側にはアマモの生息が見られるのですが、松川浦でも鵜ノ尾岬や宇多川の河口あたりにはそういう自然の原風景が残されていました。



モニタリングサイト1000
松川浦が環境省の「モニタリングサイト1000」に選ばれました。
これは生物の生息状況を長期にわたって把握し、地球温暖化や外来種の影響などの環境の変化に対応していこうという事業です。今後、環境省は日本を代表する生態系を全国から1000ヵ所程度選び、生息する生物を100年間に渡ってモニタリングしていきます。

松川浦は東北地方の太平洋岸では最大規模の干潟であることから、シギ・チドリ類と干潟の底生動物に関するモニタリングサイトに選定されています。


生きものたちの楽園

松川浦が国の重要湿地500に選ばれたのを受け、平成15年、16年に初めて福島県の本格的な調査が行われました。
その結果、なんと松川浦は福島県内では、尾瀬に次ぐホットスポット(貴重な動植物が集中している場所)と判明しました。その絶滅の恐れのある生物のほんの一部をご紹介いたします。

※「◎」:環境省 絶滅危惧U類、福島県 希少種
 「○」:環境省 準絶滅危惧、福島県 絶滅危惧U類
 「△」:福島県 準絶滅危惧

 ● 鳥類
生物写真
コクガン:カモ目カモ科。冬鳥。全長61cm。雌雄同色、頭から頸と胸が黒、喉に白斑。海藻や水草を採食。「◎」
生物写真
セイタカシギ:チドリ目セイタカシギ科。旅鳥または留鳥。全長37cm。足は長くピンク色。魚や昆虫を採食。「◎」
生物写真
ホウロクシギ:チドリ目シギ科。旅鳥。全長63cm。褐色で、体下面には黒褐色の縦斑。甲殻類やゴカイを採食。「◎」
生物写真
アカアシシギ:チドリ目シギ科。旅鳥。全長28cm。足が赤く、嘴は先が黒く基部が赤い。昆虫や甲殻類を採食。「◎」
生物写真
ミサゴ:タカ目ミサゴ科。留鳥。全長57cm。頭部が白く、停空で飛翔し足から水中に飛び込み魚をとる。「○」
生物写真
オオヨシキリ:スズメ目ヨシキリ科。夏鳥。全長19cm。アシ原に多く、口の中が赤。昆虫や草木の実を採食。「△」

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 ● 植物
生物写真
イガガヤツリ:海岸沿いの湿った砂地に生える多年草。花序を栗のイガに見立てた。
生物写真
シオクグ:塩性湿地に群生。同類の砂浜のコウボウシバが背伸びしたよう。
生物写真
オオシバナ:塩性湿地に群生する30cmほどの多年草。葉が柔らかい。
生物写真
シバナ:オオシバナと一緒に塩性湿地に群生するが少し小さい。
生物写真
タチドジョウツナギ:塩性湿地に群生する多年草。茎も葉もまっすぐに立ち、細い。
生物写真
ハマサジ:塩性湿地に多い越年草。葉が匙形なのでこの名がある。
生物写真
ハママツナ:塩性湿地に多い一年草。葉が肉厚で松葉のように細い。
生物写真
ホソバハマアカザ:塩性湿地に多い一年草。葉が細く肉厚。果実(正しくは苞)は三角。
生物写真
コハマギク:クロマツ林内などに生える野菊。秋に鵜ノ尾岬の崖一面にお花畑を作る。
生物写真
ハイネズ:海岸砂地に多い、匍匐する低木。葉の先が刺のように尖る。
生物写真
ヨシ:水辺を代表する草。別名葦[あし]。松川浦にはかつて広大なヨシ原があった。
生物写真
アイアシ:湿地に生え、ヨシに似るが、5〜12本の直立する穂が特徴。
生物写真
コウボウシマ:砂浜の多年草。弘法麦に対比して花穂が小さいため弘法芝。
生物写真
ハマボウフウ:砂浜に生える多年草。砂浜の開発・減少と乱獲で絶滅危惧種の仲間入り。
生物写真
ハマハタザオ:砂浜に生える越年草。沢山の果実が旗竿のようにまっすぐ立つ。
生物写真
ハマナデシコ:砂浜やクロマツ林に生える、ピンクの花が鮮やかな多年草。
生物写真
ハマエンドウ:砂浜や浜辺の草地、クロマツ林に多いエンドウの仲間。
生物写真
ハマヒルガオ:砂浜に多い多年草。丸い葉とアサガオのような花が特徴的。
生物写真
ハマニガナ:砂浜に多い多年草。砂に隠れた茎から3〜5つに分かれた特徴的な葉を出す。
生物写真
シロヨモギ:砂浜に生えるヨモギの仲間で、その名の通り白さが目立つ。

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 ● 昆虫
松川浦には海辺や汽水、ヨシ原を生息場所とする昆虫類が多く、暖地性の昆虫も多いのも特徴ですが、一部に寒地性の種も見られます。さらに、鵜ノ尾岬周辺や大森山のような森林を有することから、里山の昆虫類も多く生息しており、非常に多彩な昆虫相を形成しています。ここでは、松川浦に生息する昆虫の中から、松川浦を特徴づける種を中心に紹介いたします。
生物写真
ヒヌマイトトンボ:体長約25〜30o。汽水のヨシ原に生息する。国・県レッドデータブック絶滅危惧T類。
生物写真
アオモンイトトンボ:体長約32o。暖地性の種で、県内では浜通りの海岸付近にだけ生息する。
生物写真
アオヤンマ:体長約70o。ヨシが繁茂した沼に生息する。県レッドデータブック準絶滅危惧種。
生物写真
ネアカヨシヤンマ:体長約70o。ヨシが繁茂した沼に生息する珍しいヤンマ。松川浦の生息地は北限。
生物写真
カトリヤンマ:体長約65o。主に黄昏れ時に飛翔する。県レッドデータブック準絶滅危惧種。
生物写真
マダラヤンマ:体長約65o。ヨシが生える沼や湿地に生息。寒冷地性のトンボで浜通りでは稀。
生物写真
ギンヤンマ:体長約70o。池や水田周辺に普通に見られるヤンマ。
生物写真
アキアカネ:体長約40o。アカトンボの中でも最も個体数の多い種。
生物写真
タイリクアカネ:体長約45o。松川浦は県内唯一の産地。県レッドデータブック絶滅危惧T類。
生物写真
リスアカネ:体長約40o。「リス」は人の名前。県内ではあまり多くない。
生物写真
チョウトンボ:体長約35o。チョウのようにひらひらと飛ぶ。県レッドデータブック準絶滅危惧種。
生物写真
カスミササキリ:体長20〜25o。ヨシ原に生息する。羽の長い長翅型と短い短翅型がある。
生物写真
マダラバッタ:体長20〜30o。海岸付近の草地や砂浜に生息する。
生物写真
コバネイナゴ:体長30〜40o。イネの害虫としても知られるイナゴ。
生物写真
オンブバッタ:体長♂25o、♀40o。メスがオスよりも大きく、上に乗っているのがオス。
生物写真
オオハサミムシ:体長25〜30o。砂地に棲むハサミムシで、松川浦では砂浜に多い。
生物写真
ヒウラカメムシ:体長7〜8.5o。松川浦は県内唯一の産地。湿地のイネ科やスゲ類の穂にいる。
生物写真
モンキツノカメムシ:体長12〜14o。黄色い斑紋が特徴。浜通りでのみ記録されている。
生物写真
アブラゼミ:体長35〜40o。夏を代表するセミ。個体数は多い。
生物写真
ミンミンゼミ:体長約35o。「ミーンミーン」という鳴き声は有名。
生物写真
ニイニイゼミ:体長20〜25o。松川浦に生息するセミの中では最も早い6月下旬頃から鳴き出す。
生物写真
ツクツクボウシ:体長約30o。松川浦に生息するセミの中では、最も遅い10月頃まで鳴いている。
生物写真
ツノトンボ:体長約35o。トンボの仲間ではない。触角が長いのが特徴。
生物写真
キバナガミズギワゴミムシ:体長約4o。河口付近の石の下などに生息する。
生物写真
ハマベミズギワゴミムシ:体長約4.5o。汽水の湿地やヨシ原に生息する。
生物写真
ハマベエンマムシ:体長2.5〜4o。砂浜の砂の中に生息する。
生物写真
ウミベアカバハネカクシ:体長10〜12o。砂浜に打ち上げられた海藻やゴミ、流木の下などに生息する。
生物写真
ホソケシマグソコガネ:体長約3o。砂浜のイネ科植物などの根際に生息する。
生物写真
ニセマグソコガネ:体長3.5〜4.5o。砂浜のイネ科などの根際に生息する。
生物写真
シロスジコガネ:体長約30o。海岸の松林周辺に多い。
生物写真
ハマヒョウタンゴミムシダマシ:体長約5o。砂浜の砂の中に生息する。
生物写真
クロカミキリ:体長約20o。松林に生息する。明かりに良く飛来する。
生物写真
オオルリハムシ:体長10〜15o。湿地に生息する。県レッドデータブック準絶滅危惧種。
生物写真
トビイロヒョウタンゾウムシ:体長5〜10o。砂浜のイネ科植物などの根際に生息する。
生物写真
クロアゲハ:前翅長45〜65o。オスには後翅に白い斑紋があるが、メスにはない。
生物写真
アオスジアゲハ:前翅長30〜45o。暖地性のチョウで、県内では浜通りでのみ定着している。
生物写真
モンシロチョウ:前翅長25〜30o。キャベツやダイコンなどの害虫として有名なチョウ。
生物写真
アサマイチモンジ:前翅長約30o。良く似た種にイチモンジチョウがいる。鵜ノ尾岬周辺に多い。
生物写真
コムラサキ:前翅長約35o。湿地周辺に生えているヤナギの木周辺を飛翔している。
生物写真
ホタルガ:前翅長20〜25o。昼間活動するガで、大森山や鵜ノ尾岬周辺で見られる。
※前翅長(ぜんしちょう):前ばねの付け根から先端までの長さで、チョウやガの大きさを示すのに用いる。
※写真提供:谷野泰義(キバナガミズギワゴミムシ)、標本提供:齋藤修司(ハマベミズギワゴミムシ、ハマベエンマムシ、ウミベアカバハネカクシ、クロカミキリ)

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 ● 底生生物
生物写真
ウミニナ:太い塔形で殻口が張り出してずんぐりしている細長い巻貝。希少種で少ない。
生物写真
ホソウミニナ:干潟で最も多く目にする細長くスラっとした巻貝。砂泥底の上を這い回っている。
生物写真
フトヘナタリ:太めの巻貝で成貝では殻のてっぺんが欠けている。ヨシ原内の泥土上に棲む。
生物写真
タマキビ:ソロバン玉の形をした1.5cm程の巻貝で、護岸壁に集団でくっついている。
生物写真
マツカワウラカワザンショウ:殻長2〜3mmと極小サイズのカワザンショウガイの一種で砂干潟上に棲む。
生物写真
サキグロタマツメタ:球形で殻頂部分が黒灰色の、殻長3〜4cmの肉食性巻貝で、外来種である。
生物写真
マガキ:護岸壁に多く付着している白色の二枚貝であるが、泥干潟にカキ礁を形成する。
生物写真
サビシラトリガイ:殻長4〜5cmの白色でつやのない、卵形の二枚貝で、殻の厚みはあまりない。
生物写真
イソシジミ:殻長4cm程の卵形の薄い二枚貝で、殻の上端の靭帯が三角で飛び出している。
生物写真
アサリ:殻長4cmになる卵形の二枚貝で膨らんだ形をしており、殻は布目状である。
生物写真
オキシジミ:直径4.5cm程のほぼ円形の二枚貝で、殻は厚く良く膨らむ。還元土中で黒くなる。
生物写真
オオノガイ:殻長10cm程の長卵形の二枚貝で、少し膨らむ。殻は白色であるが縁は褐色。
生物写真
ツバサゴカイ:U字型の丈夫な棲管を作ってその中に棲む大型のゴカイ類。数は少ない。写真は棲管(左)と本体。
生物写真
タマシキゴカイ:体は太く円筒形で体の中程に房状の鰓がある。底土上に糞塊を盛り上げる。
生物写真
ニホンスナモグリ:白い柔らかい体でエビに似た形をしており、左右不同のハサミを持つ。深い巣穴に棲んでいる。
生物写真
ユビナガホンヤドカリ:小型のヤドカリで様々な巻貝の殻を利用する。
生物写真
ケフサイソガニ:石の下に棲むカニで幅3cm程になる。雄のハサミに毛の房がある。
生物写真
アシハラガニ:ヨシ原を中心に棲む黄緑色のカニで幅3.5cm程度。頑丈なハサミを持つ。
生物写真
コメツキガニ:砂干潟に棲む小型で膨らんだ形のカニ。餌をとった残りの砂で砂団子を作る。
生物写真
ヤマトオサガニ:横に細長い長方形のカニで、幅3cmぐらい。目が長く、泥干潟に棲む。

 ● 魚類
生物写真
ウナギ:大きな個体で全長1mほど。宇多川では上流から下流まで生息するが、近年は環境の変化で減少した。
生物写真
シロウオ:全長5cmほどの透明なハゼ。沿岸域に生息し、春先に宇多川下流域の瀬に遡上して産卵する。地方名は「カサキ」。
生物写真
サッパ:体長約15cm。松川浦では中央部から南奥部の砂泥底域に多くみられる。動物プランクトンを主に食べる。
生物写真
マルタ:全長は50cm前後。松川浦にも多く、5月の産卵期には宇多川に遡上する。水しぶきをあげた産卵行動は豪快。地方名は「オオガイ」。
生物写真
ボラ:全長は最大で60cmほど。宇多川下流域や松川浦で確認することができる。幼魚はスバ、あるいはスバシリなどと呼ばれている。
生物写真
ミナミメダカ:全長4cmほどの小さな魚。松川浦周辺の水路でみられるが、宇多川下流域の流れのゆるやかな岸辺でも確認することができる。
生物写真
メバル:体長20〜25cm。岩礁域、ガラモ場、アマモ場などに棲み、群れを作って泳ぐ。卵胎生で冬に仔魚を産む。
生物写真
アイナメ:体長30cm。岩礁域の藻場周辺に棲む。粘着性の卵塊を海藻の根元や岩場に産みつけ、雄が卵を保護する。
生物写真
ウミタナゴ:体長25〜30cm。ガラモ場や岩礁域に棲み、甲殻類、多毛類等を食う。卵胎生で初夏に10〜15尾の仔魚を産む。
生物写真
ミミズハゼ属の1種:体長は約8cm。まだ和名のないミミズハゼの仲間。松川浦や宇多川の下流域でみられる。
生物写真
マハゼ:全長は最大で25cmほど。松川浦を代表するハゼで、釣りの好対照となっている。宇多川下流域にも生息する。
生物写真
アシシロハゼ:全長10cmほど。松川浦では岸辺にて、釣り人に釣り上げられることがあるが、宇多川下流でも確認することができる。
生物写真
ヒモハゼ:全長6cm前後。名前のように細長いハゼ。シャコやカニ類の生息孔にみられるというが、松川浦ではそれら生息孔の周りの泥底から確認した。
生物写真
ヒメハゼ:全長10cmほど。松川浦内だけでなく、宇多川流入地点でも確認することができる。
生物写真
スジハゼ:全長10cmほど。頭部や体側に青く光るきれいな斑点がある。松川浦では時折釣り人に釣り上げられることがある。
生物写真
ヌマガレイ:全長は90cm前後。松川浦に多いが、幼魚は宇多川下流域の砂礫底からも確認することができる。
生物写真
イシガレイ:体長40〜50cm。松川浦では、冬に外海で生まれた稚魚が、春先から初夏にかけて岸壁近くや干潟の縁などにたくさんみられる。
生物写真
エドハゼ:環境の良好な河川河口部や汽水域などに生息する。国内での確認地点は少なく、県内でも現在のところ松川浦からしか確認されていない。絶滅危惧TB類(国)
生物写真
シラウオ:体長約10cm。松川浦では、夏に約3cmの稚魚が出現する。翌春までに約10cmに成長し、宇多川などの河口周辺の砂地域で産卵する。

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